はじめに


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はじめに

こちらは、花男を題材とした、二次小説サイトです。

あくまでも、個人が趣味の範囲内で楽しむ為だけのブログであり、原作者様他、公式な媒体とは、全く関係がありません。

気に入らない作品は、『読まない』と、言う選択肢がある事を、どうか忘れないでください。

CPは、司つく、総つくをメインとしておりますが、他のCPも書くことはあります。

『◯つくだけしか受け付けない』とおっしゃる方は、どうか、我が家の存在をお忘れ下さい。

読まれた後の苦情、ネガティヴコメントは、一切受け付けません。

・・・なんか、こんな事を、一々言わないといけないのかと思うと、寂しくなりますね。

皆様、どうか、楽しく、花男二次の世界をお楽しみ下さい。

司つく・Slow dance 10(未完)

こちらは、以前途中まで書いて辞めた作品です。

季節は、冬です。

暫く書く時間が取れないので、せめて今書いてある物を出したいと思います。

未完成ですので、気になる方は、読まずにスルーして下さい。

私には珍しいシリアスで、11話まで書いていました。

11話掲載時に、その後のあらすじを書かせていただく予定です。

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「今日から、深夜に起こしには参りませんので、朝までぐっすりとお眠りください」

午後十時。

西田は、部屋の明かりを落とし、間接照明だけにした。

司の手の皮が厚くなり、マメが固くなった頃、庭には、耕す地面は残されていなかった。

つくしの為に。

そう言いながら、自分が少しでも彼女の傍に行きたかった。

それすら叶わなくなり、誰も居なくなった部屋で、司は、ソファーに深く沈み込み、目を閉じていた。

「それでは、失礼いたします」

一礼をして、西田が部屋を出た。

パタン

外界と司を遮断する扉が閉まった。

しかし、いつまで経っても鍵のかかる音がしない。

司の長い睫毛に縁取られた瞼が、ピクリと動いた。

ゆっくりと開かれた瞳は、薄暗い部屋の中で、先程西田が出て行ったドアを見つめる。

彼は、探る視線を向けながら、逡巡を繰り返した。

カチッカチッカチッカチッ

腕に付けられたロレックスの秒針が、時を刻み、十一時を指す頃、やっと司が立ち上がった。

扉のノブに手をかけると、ゆっくりと回す。

きぃー

呆気ないほどの軽さで、扉が開き、新鮮な空気が部屋へと流れ込んだ。

スーッ

司は、深く息を吸い込むと、ゆっくりと吐き出した。

長年の付き合いで、西田という男が、うっかり鍵を書き忘れるなどと言った愚行をしない事など分かっている。

何かを意味する解錠に、母親である楓の意思が隠されているのは確か。

「いけすかねーな」

常に、自分をコントロールし、意のままに操ろうとする女の顔が脳裏に浮かび、不快感に胃液が迫り上がりそうだ。

そんな司の耳に、この重厚な家には似つかわしくないポップな曲が聞こえてきた。










恐れないで





目指す場所





出来る出来ないは後回し









それは、以前流行った流行歌。

ロウで作った羽で空を自由自在に飛び回り、最後に太陽に近づきすぎて墜落した男の名が付けられていた。

しかし、曲には、暗さは微塵もなく、笑われても、揶揄われても、一心に思いを叶えようとした彼を賛美する歌だった。

耳が捉えたフレーズが、まるで何かの啓示のように、司の足が一歩前に出る。

真紅のカーペットに、ジワリと靴底が沈み込んだ。

一歩、また、一歩。

薄氷を踏むような心許ない感覚に、壁に手を伸ばし、大きな手を押し付けた。

徐々に音楽が大きくなり、引き寄せられるように辿り着いた場所は、使用人達が利用する食堂。

そのテーブルの上に置かれているのは、小さな古びたラジオ。

そこから流れる掠れた音声が、次の曲を紹介している。

だが、司の視線を釘付けにしたのは、テーブルに突っ伏し眠るつくし。

広げられたノートには、びっしりと文字が書き込まれ、横に置かれた教科書にも、書き込みがされていた。

無理やり拉致されてからも、勉強を続けてきたのは、司が記憶を戻した後、ここを追い出されても困らないようにする為。

そんな事情等知らない司だが、必死さの滲む華奢な背中に、このまま彼女が消えてしまうかのような不安を感じる。

まだ、冷え込みの強い深夜。

つくしが背もたれに掛けていたカーディガンを手に取ると、そっと肩に掛けてやった。

そして、そこから一番離れた椅子に座ると、自分も机に突っ伏してみた。

固く、冷たく、無機質なそれが、つくしと共にこの場に居ると言うだけで、特別な物に感じられた。

暫くそのままで居ると、

「ん・・・」

寝落ちしていたつくしが身動ぎをして、自分の体に掛けられカーディガンを握りしめた。

どんどんと覚醒する意識の中、脱いでいたはずのそれが、移動していることに微かな驚きを見せる。

そして、突っ伏したまま、ゆっくり目を開けると、二メートル先に、同じ体勢でこちらを見る司が居た。

つくしの視線は、真っ直ぐに司を見つめる。

司も、目を逸らさずに、つくしを見つめる。

どれだけの時間が流れただろうか。

何事もなかったかのように、つくしは、立ち上がると、台所へと消えた。

そして、数分後に、大きなマグカップを二つ持って帰ってきた。

湯気を上げるそれを、司の前に一つ置き、もう一つを持って、自分の席に帰る。

そのまま、まるで司が居ないかの如く、勉強を続けた。

司は、体を起こすと、マグカップを手に取り、両手で包み込んだ。

冷たい空気の中、そこだけが陽だまりのように暖かい。

言葉を交わすことはない。

しかし、この日から、この奇妙な光景は、使用人用食堂で、毎夜繰り返されることとなった。

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皆さんの温かさ、四葉、受け取っております。
お言葉に甘え、コメ返は、時間の関係上、断念させて頂きます。
ありがとう。
大好きです。
良きGWを。

司つく・Slow dance 9(未完)

こちらは、以前途中まで書いて辞めた作品です。

季節は、冬です。

暫く書く時間が取れないので、せめて今書いてある物を出したいと思います。

未完成ですので、気になる方は、読まずにスルーして下さい。

私には珍しいシリアスで、11話まで書いていました。

11話掲載時に、その後のあらすじを書かせていただく予定です。

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この日、日差しがいつもより暖かかった。

つくしは、手を太陽に向けて突き出し、指を目一杯広げてみた。

キンと冷えた空気。

その中で、微かな温かさを感じた。

まだ、春は遠い。

それでも、着実にその足音が近づいていた。

「はーーーっ」

手に息を吹きかけ、指先を擦り合わせ、軽く振った。

そして、腰に手を当て、背中を反らす。

長く土弄りをしていると、どうしても体が固くなった。

そんなつくしの目に、ふと、司の部屋の窓ガラスが映った。

風のない室内で、カーテンが揺れている。

ジッと見ていると、慌てたように閉められ、そこに誰かが居ることを露呈した。

「・・・ホント・・・馬鹿」

つくしは、微かに笑った。

隠れて見ているつもりなのか?

あれだけ凝視されれば、子供でも気づく。

実際に気づいたのは、3日前。

多分、もっと前から覗いていたのだろう。

「あーーー、なんだかなぁ」

つくしは、記憶をなくす前の司を愛していた。

だが、記憶をなくした司との暮らしは、何故か、心穏やかだ。

朝起きて、夜眠るまで、毎日同じ事を、同じ時間に、同じ言葉で繰り返す。

それ以外の事を考えず、ゆっくりと流れる時間に身を任せると、不思議と頑なな心が解れていった。

司の記憶が戻らなければ、この生活は永久に続くのか?

「ま、それも、悪くないかもね」

冗談とも本気とも取れない独り言に、つくし自身、苦笑いしか出なかった。












真新しい包帯を親指の腹で撫でる。

つくしが、自分の意思で手当てをしてくれた。

その事が、未だに夢のようで、こうして何度も確かめずにはいられない。

「しっかし、不細工な巻き方だな」

風邪薬さえ医者の処方したものしか飲まない司にとって、今にも解けてしまいそうな包帯は心許なく、つい固く手を握り締めてしまう。

その所為で、折角塞がり始めた傷口が開いたとしても、気にはならなかった。

カーテンの隙間から、いつものようにつくしを覗くと、年寄りのように腰に手を当て背を反らせていた。

「ばばくせぇな」

愛しさのこもる悪口。

まるでそれが聞こえたかのように、つくしがこちらを見た。

「うぉっ」

慌ててカーテンを閉め、そして、自分の失態に、顔が歪んだ。

「自爆してどーすんだよ」

今ので、完全に気づかれたはずだ。

司は、何度も唾を飲み飲むと、恐る恐るカーテンを摘み、そっと外を覗いた。

そこには、今までと何も変わらず、つくしが微笑を浮かべ、畑仕事をしていた。

「怒んねーのかよ」

覗きを許されたかのような事態に、司の思考回路は混乱する。

それでも、彼女の笑顔が見られるなら、どんな理由でもいい。

「牧野・・・」

司は、コツンと窓に額を当て、自然と流れ出る涙をそのままに、いつまでもつくしを見下ろしていた。











楓は、西田からの報告書を読み、フーッと長く息を吐き出した。

自分の決断で、再びつくしを暗闇に突き落とした罪悪感が、彼女の眠りを妨げていた。

激務と不眠に痩せこけた彼女の元に、やっと届いた微かな光り。

「これが運命と言うものなのかしら?どうやっても引き離せないのね、貴方達は」

楓は、報告書を茶封筒に戻すと、私物を入れる引き出しに片付け、仕事に戻った。

いつからだろう?

我が子の顔よりも、書類を眺めるのが長くなったのは?

椿が生まれた頃は、屋敷にも、笑いが満ちていた。

椿が初めて歩いた日、夫は、ビデオカメラを回し、自分は、手を叩いて我が子を呼んでいた。

それが、跡取りである司が生まれてから、徐々に変わってしまった。

少しでも多くの物を、司に残してやりたい。

そんな願いはいつしか忘れ、ただ、道明寺家を大きくする事のみに邁進し、人の道を外れる事さえ厭わなくなった。

「人生、やり直すのに、遅いと言うことはない・・・誰が言った言葉だったかしら?」

楓は、自分の人生を振り返り、二度と同じ過ちをしまいと固く心に誓った。

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コメントお返事、遅くなってすみません。

これから、二ヶ月、家族のサポートに回ることが決まり、七転八倒しております。

しかし、七転び八起き。

一緒に頑張ろうと思います。

コメ返、暫しお待ちください。

本当にごめんなさい。

司つく・Slow dance 8(未完)

こちらは、以前途中まで書いて辞めた作品です。

季節は、冬です。

暫く書く時間が取れないので、せめて今書いてある物を出したいと思います。

未完成ですので、気になる方は、読まずにスルーして下さい。

私には珍しいシリアスで、11話まで書いていました。

11話掲載時に、その後のあらすじを書かせていただく予定です。

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「くぅ・・・」

全身の痛みとともに、目が覚めた司は、体を起こし、周りを見回した。

既にセッティングが済んだ朝食は、冷え切っているようで、湯気が上がっていない。

「起こせよな」

つくしへの不満を口にしつつ、司は、前髪を掻き上げた。

「ん?」

額にザラついた何かが触った。

「あ・・・」

手に、包帯が巻かれていた。

指先には、絆創膏。

慣れない畑作業でマメが出来、終わる頃には、手の皮はズル剥けだった。

しかし、司は、シャワーだけを浴び、そのまま倒れ込むように眠ったはず。

「ま・・・きの?」

司は、驚いた表情を見せ、そして、あの事件以来、初めて笑った。

そんな自分に、また、驚く。

「牧野・・・牧野・・・牧野・・・」

何度も口遊むと、それが体に馴染んでいて、自然と出てきた。

「俺は、何故、お前だけを忘れちまったんだ」

その事実が、どれほどつくしを傷つけたのか。

その事を思うと、司の心は張り裂けそうな痛みを感じた。








次の夜も、司は、スコップを片手に庭に出た。

日中、つくしは、耕した場所に何かしら肥料のようなもの撒いていた。

西田曰く、冬の間は、土作りの時期らしい。

耕したからと言って、すぐに種を蒔く訳じゃない。

それは、自分とつくしの関係を表しているようで、司は、苦笑いをしながらスコップを振るった。

そんな日が、何日か続いた。

夜中に庭を掘り返し、朝には、眠ったふりをして、つくしに手当てをしてもらう。

彼女も、気付いているのか、ぎこちない動きで、包帯を取り替えた。

互いに、息を潜め、触れ合う部分から伝わる体温に鼓動を早める。

こんな日々が、ずっと続けば。

司の中に、細やかな思いが芽生えた。

一方のつくしは、目を閉じた司の顔に、時折視線を向ける。

記憶をなくした哀れで、滑稽で、憎めない男。

彼の所為で、つくしの人生はめちゃくちゃだ。

にも関わらず、この一時が心地よく、楽しみにしている自分がいる。

処置が終わると、つくしは、無言のまま部屋を出る。

キィー、パタン

あの重く、分厚いドアが閉まる音が、どこか甘く、愛しいものに思えた。

カチャリ

掛けられた鍵は、司をこの部屋に閉じ込める。

こうして、司は、今も昔も、つくしに心奪われ、囚われたままだった。






外気温が、零下を下回ったある日、司が庭に下りると、ポーッ光るオレンジの灯りが揺れていた。

側によると、ちいさなライトと茶色い紙袋が置かれている。

中には、軍手とスポーツ飲料とタオル。

メッセージも無く、素っ気なく置き去りにされていた。

真っ暗な庭で、司は、なんとも言えない表情を浮かべた。

泣き笑いとでも言おうか。

歪んだ顔のまま、司は、一人黙々と土を掘り返し始めた。

時間を忘れ、汗を流し、つくしの顔を思い浮かべながら。

その姿を、西田がそっと見つめている。

「ぜってー、手伝うなよ!」

初日に言われてから、毎夜、作業が行われる二時間、彼は、寒空の中、まんじりともせずに立っている。

足先から凍りそうな寒さ。

それでも、西田は、芽生え始めた小さな希望を、優しく見守り続けていた。

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電波の届き難い所にいるので、コメントお返事は、夕方になります。

いつも、本当にありがとう。

頑張って来ます!

司つく・Slow dance 7(未完)

こちらは、以前途中まで書いて辞めた作品です。

季節は、冬です。

暫く書く時間が取れないので、せめて今書いてある物を出したいと思います。

未完成ですので、気になる方は、読まずにスルーして下さい。

私には珍しいシリアスで、11話まで書いていました。

11話掲載時に、その後のあらすじを書かせていただく予定です。

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午後八時すぎ。

外は、陽も落ち、暗闇に満ちている。

「司様」

西田が、真っ暗な部屋の中にいる司に声を掛けた。

彼は、呼び掛けに応える素振りもなく、カーテンの隙間から、ただじっと外を眺めている。

西田は、手探りでスイッチを探し、指を乗せた。

「司さま、灯りを点けてもよろしいでしょうか?」

「勝手に点けんじゃねー」

外を見たまま、司は、吐き棄てるように言った。

西田は、壁際から離れると、音も無く司に近づく。

そして、司の傍に立つと、自分も窓の外へと視線を移した。

そこには、一人でスコップを奮うつくしが居た。

暗がりで、ヘッドライトだけを頼りに、黙々と土を掘り返し、枯れた草木を取り除いている。

今、部屋の灯りを点ければ、司の影が、カーテン越しに見えてしまうだろう。

意図を理解し、西田は、微かに口角を上げた。

「あいつ、何してんだ?」

「このお庭を畑に変えるそうです」

コツコツと作業を続けても、女の力ではたかがしれている。

ましてや、冬の寒空の下。

凍って固くなった土を、あと何日掘り返すというのだ。

「西田」

「はい」

「俺をこの部屋から出せ」

司の声音は、静かで、穏やかだった。

西田は、その懐かしい声に、涙が出そうになった。

しかし、表面上は、かわらぬ鉄仮面のまま、首を横に振る。

「それは、楓社長の許可がないと」

「逃げやしねーよ。明朝三時から二時間だけ庭に出せ」

司の言わんとするところを察した西田は、

「かしこまりました」

と頭を下げて出て行った。

背後で、カチリと鍵を閉める音がする。

ふと芽生えた思いは、司自身、馬鹿馬鹿しいと思った。

だが、手に息を吐きかけながら、暗闇の中、土を掘るつくしを放っておけなかった。









「司様、朝でございます」

つくしが、司を起こしに来た。

しかし、司は、死んだように起きようとしない。

「司様!」

揺さぶっても起きない相手に、つくしは溜息をついた。

既に朝食の用意は終わっている。

つくしは、司をそのままに、部屋を出た。

そして、昨日の作業の続きをするために庭に出た。

「あ・・・」

広い庭の一角が、整地されていた。

抜かれた植物は、壁際にうず高く盛られている。

この家に、短時間でこれだけの作業が出来るのはSPを除いては一人だけ。

無論、SPは、司の警護にのみ心血を注ぎ、こんなふざけた事はしない。

つくしは、フカフカになっている土に触れた。

「あんたなの?道明寺」

つくしの頬が、微かに緩み、

「本当、馬鹿」

彼女が零した言葉は、誰かの耳に入る事なく、虚空に消えた。

それでも、つくしの凍てついた胸には、温かさの欠片が残った。


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司つく・Slow dance 6(未完)

こちらは、以前途中まで書いて辞めた作品です。

季節は、冬です。

暫く書く時間が取れないので、せめて今書いてある物を出したいと思います。

未完成ですので、気になる方は、読まずにスルーして下さい。

私には珍しいシリアスで、11話まで書いていました。

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つくしが、ここに来てから二週間が経った。

「司様、朝でございます」

今日も、つくしの声で、司は目を覚ます。

それは既に、司にとって神聖な儀式のようで、この声が無いと、目を開ける気さえおこらない。

「お食事は、そちらにご用意しております。食べ終わりましたら、廊下にカートを出しておいてください。引き取りに参ります」

いつもと同じ台詞。

いつもと同じ無表情。

しかし、二階の窓から覗くと、畑仕事をするつくしには、柔らかな笑顔が生まれていた。

司は、あの笑顔が欲しかった。

一目見てから、胸の中が熱くなり、得体の知れないざわつきが心を占領している。

だが、まだ火傷の痕が残るつくしに、それを求めることは出来なかった。

お辞儀をし、部屋から出て行こうとするつくしに、司が、声を掛けた。

「牧野」

その声は、つくしが昔聞いていたものに似ていた。

「何でしょうか、司様」

「俺が・・・記憶を取り戻したと言ったらどうする?」

「どうもいたしません。あたしには、関係のないことですので」

つくしは、頭を下げると、ドアを閉めた。

司は、カマをかけたつもりだった。

自分の失った記憶が、つくしだと言う確証めいたものが、日々彼の中で強くなっていた。

しかし、つくしの今の態度から、たとえそれが本当だとしても、彼女にとっては、もう、終わった事なのだと伝わってきた。

病室で、つくしを初めて見た時のことを思い出す。

そして、何度も現れては、自分に必死に何かを訴えかけていた彼女を無下にして、あまつさえ、これ以上ない言葉の数々で傷付けた。

「くそっ!」

言い知れぬ無力感。

自分自身に対する腹立たしさ。

失くしたものの大きさが、どれ程のものなのか?

それすら掴めない司は、ただ、窓辺からつくしを見つめるしかなかった。










「類、落ち着け」

「はっ、落ち着けだって?総二郎は、何で落ち着いていられるんだよ!」

総二郎からの連絡で、つくし失踪の事実を知った類とあきら。

手を尽くした捜索にも関わらず、一向に動向が掴めない。

それは、逆に言えば、道明寺家の関与を表している。

「司が、アメリカに渡航した記録が無い以上、日本の何処かにいるはずだ。牧野より、そっちから調べた方が、なんか分かるかもな」

あきらが、自社のネットワークを使い、道明寺家の不可思議な動きを調べていた。

「司のかーちゃんも、まだ、日本にいる。昨日は、都内での会食に出席してた。ただ、これまでに無い厳重警戒がされてるらしくて、その後の足取りが掴めない。これって、怪しくないか?」

「また、あの人か」

総二郎は、深い溜息を吐いた。

司との恋を邪魔した張本人。

それが、今度は、つくしを拉致し、何処かに監禁している。

それもこれも、全ては司の為。

つくしの感情など、無視した悪魔のような所業。

「今度も・・・脅されたのかもな」

総二郎の頭に、優紀の顔が浮かぶ。

自分達との関係を絶った後も、彼女とは切れなかった。

それは、つくしにとって、優紀がアキレス腱だと言うことを示している。

「こんなことなら、俺が先に牧野をフランスに連れ去っていたら良かった」

類は、つくしに提案した事があった。

司との破局後、日本のマスコミのゴシップネタにされたつくしに、日本を出ないかと。

誰も知らないところで、一からやり直そうと。

しかし、つくしは、首を縦に振らなかった。

『花沢類、あんたの顔を見ると、あいつを思い出しちゃうから、それは無理』

泣き腫らした顔のまま、つくしは、類の元を去った。

類のつくしへの愛が、なみなみならぬことは、総二郎もあきらも知っている。

それは、単純な男女の愛ではない。

見返りを求めない、無償の愛。

類は、時々思う。

もしかしたら、つくしと自分は、前世で一人の人間では無かったのかと。

「牧野・・・」

類は、彼女の笑顔を思い浮かべ、それを守りきれなかった事に、そっと涙を流した。

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司つく・Slow dance 5(未完)

こちらは、以前途中まで書いて辞めた作品です。

季節は、冬です。

暫く書く時間が取れないので、せめて今書いてある物を出したいと思います。

未完成ですので、気になる方は、読まずにスルーして下さい。

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優紀は、ある男に電話をした。

『あ?もしもし?』

「夜分遅くすみません。優紀です」

『あぁ』

声の主は、少し面倒臭そうに返事をした。

隣りに、女が寝ているのかもしれない。

「突然申し訳ありません。しかし、緊急を要するので」

『なに?』

「つくしが、消えました」

電話越しに、男が息を飲んだのが分かる。

『いつ?』

「三日前です」

『警察には?』

「まず、つくしのご両親に電話を掛けました。そしたら、心配はいらないと・・・。ただ、何処にいるのか、何をしているのか、いくら聞いても口を割りません」

ルーズだが、人の良いつくしの両親は、嘘が下手だ。

優紀が深く追求する程に口籠り、一方的に電話は切られた。

「雪の日、バイト帰りに何かあったようです」

『分かった。後は、俺達に任せて』

「よろしくお願いします」

優紀は、通話を切ると、ホッと息を吐いた。

つくしが、F3と連絡を絶った時、総二郎から、つくしに何かあったら連絡をするように、携帯番号を渡された。

他の二人が、直接つくし会いたがるのに比べ、彼は、いつも控えめだった。

そこに、優紀は、彼なりの優しさを感じ、この役を引き受けた。

ここ最近のつくしは、本当に、穏やかに暮らしていた。

身の丈にあった暮らしは、無理をしないでいい。

バイトも、英徳時代に比べると半分ですみ、友達とも遊べる時間もとれていた。

時々見せる、つくしの心を何処かに置き忘れてしまったような無表情を、優紀は、あえて気づかないふりをしていた。

あの燃えるような恋が、一瞬の間に淡雪と消えてしまうなどと、誰が思っただろう。

だが、事実、つくしだけを忘れると言う残酷な結末が二人をわかった。

「つくし・・・どこにいるの?」

何も言わず、消えるような友ではない。

ならば、連れ去られた可能性が濃厚だ。

次から次へとつくしを襲う厄災に、優紀は、神様を恨みたくなった。










「つくし、ちょっと、手伝っておくれ」

朝、全ての『仕事』を終えたつくしの前に、大きなスコップを持ってタマが現れた。

「外に、畑をつくるんだ」

ここは、都心近くにある道明寺家別邸。

司監禁に使われるまで、十年以上使われていなかった。

その為、手入れもされず、放置されたままの庭は、荒れ放題で、正に廃墟といった雰囲気だった。

「はい」

タマに対しても、つくしの口数は少ない。

昔を知るだけに、タマの切なさもつのる。

寒空の下、二人で枯れ果てた薔薇の撤去を始めた。

かじかむ手では、なかなか作業は、はかどらない。

しかし、無心になり、何も考えずに済む時間は、つくしを穏やかな気持ちにさせた。

『つくし、奥様を許せとは言わないよ。だが、あんたが来てから、坊ちゃんは、確実に変わったんだよ』

言葉にはならない、タマの思い。

彼女は、二階の司の部屋を見上げた。

カーテンが一部分だけ開いている。

そこから、司がこちらを見ているのだろうとタマは感じていた。

醜聞を恐れた楓により、ここに閉じ込められた当初は、誰彼なしに手を挙げていた。

元より、身元のはっきりした口の硬い者ばかりを選んではいたが、重傷を負う者、精神的苦痛に耐えられなかった者がここを去った。

そして、今ここに残るのは、西田、タマ、つくしと、コックが一人だけ。

屋敷を守る為の屈強なSPは、建物の内外に配置されてはいるが、有事の時以外は、まるで置物のように動かない。

ザッザッザッ

霜の降りた地面は固い。

つくしは、スコップの柄を両手で持ち、先の部分を左足で蹴り込み、土にめり込ませていく。

薄っすらと体から、蒸気が上がっていた。

そして、彼女の目にも、微かだが生気が生まれる。

「今日は、このくらいにしよう。さ、私の部屋で、一服するよ」

本家道明寺邸と同じく、ここには、タマだけの畳部屋があった。

二人は、そこで向き合いながら緑茶をすする。

「おいしい」

つくしの口から、初めて自然に言葉がこぼれ出た。

「仕方ないねぇ。取って置きの玉露だが、あんたにだけは毎日飲ませてやるよ」

タマは、目に浮かぶ涙を隠しながら、急須にお湯を注いだ。

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司つく・Slow dance 4(未完)

こちらは、以前途中まで書いて辞めた作品です。

季節は、冬です。

暫く書く時間が取れないので、せめて今書いてある物を出したいと思います。

未完成ですので、気になる方は、読まずにスルーして下さい。

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「司様、朝でございます」

次の日、つくしは、何事も無かったかのように司を起こしに来た。

昨夜、ほとんど寝られなかった司は、薄眼を開けて、つくしを伺う。

頭から首に掛けて、つくしは、包帯を巻かれていた。

いや、首から胸元に懸けても包帯が見え隠れするところ、ほぼ、肩から胸に掛けても火傷を負ったのだろう。

幸い、ティーポットに入れられていたお蔭で、湯温は少し下がっていた。

それでも、入れたての紅茶は、舌を焼くほどには熱い。

それが衣服に染み込み、肌に密着したのだから、その被害は広範囲に渡るだろう。

司は、ゆっくりと体を起こすと、つくしに向き直った。

「大丈夫か?」

心なしか、司の声音に、優しさが滲む。

しかし、つくしは、

「お食事は、そちらにご用意しております。食べ終わりましたら、廊下にカートを出しておいてください。引き取りに参ります」

判を押したように、昨日と同じセリフを繰り返した。

司は、大股でテーブルに着くと、ティーポットに手を掛けた。

ビクリ

つくしの体が揺れる。

トポトポと琥珀色の液体がカップに注がれると、ホッと息を吐いたように見えた。

司は、つくしを見ずに、彼女の気配を探る。

ピリピリとした緊張感。

細長い竹串の上に置かれたヤジロベエの様に、少しの衝撃でも崩れ落ちてしまいそうな危うさ。

そこまで追い込まれ、なお、自分の部屋を訪れるつくしは、楓に何か弱味を握られているに違いない。

「ババァには、俺が話を通しておく。お前、もう、この家から出ていけ」

司は、つくしの反応に耳をそばだてた。

「ふっ」

嘲笑ともとれる溜息が聞こえた。

「なんだよ」

「あの魔女が、素直にあんたの言うこと聞くなら、あたし、最初からこんな所いないから」

「はぁ?」

「話は、それだけ?」

投げやりな相手の態度にカッとした司は、つくしを睨みつけた。

だが、その視線が、ピタリと彼女の顔に張り付いたまま、痛ましげなものへと変わる。

つくしの瞳に、自分は映っていなかった。

彼女の何もかも諦めたような顔は、まるで死人のようで、ぞっとする。

「お前・・・」

「それでは、司様、失礼致します」

慇懃に頭を下げ、つくしは部屋を出て行った。

司は、思わず、つくしの方に向かって手を伸ばした。

しかし、虚しく虚空を掴むだけ。

「俺に、どーしろっつーんだよ!」

司は、近くにあった花瓶を手に取ると、大きく振りかぶった。

ブン!

しかし、それは司の手を離れることはなく、花と水が床に撒き散らされただけだった。

「くっそ!」

コトリ

机に花瓶を置くと、司は、髪をかき上げ、窓ガラスに映った自分を見た。

荒くれた野獣。

その瞳に、動揺が見て取れる。

心掻き乱され、それなのに、どこかで、この状況を望んでいる自分がいる。

「どーしちまったんだ、俺は」

ふと、類達の言葉を思い出した。








早く思い出せ。







後悔するぞ。













「俺は、何を失ったんだ・・・。それは・・・牧野・・・お前なのか?」

手の内から、サラサラと零れ落ちる砂のように、掴もうとしても取り戻せない。

その喪失感に、司は、胸を押さえた。

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司つく・Slow dance 3(未完)

こちらは、以前途中まで書いて辞めた作品です。

季節は、冬です。

暫く書く時間が取れないので、せめて今書いてある物を出したいと思います。

未完成ですので、気になる方は、読まずにスルーして下さい。

私には珍しいシリアスで、11話まで書いていました。

11話掲載時に、その後のあらすじを書かせていただく予定です。

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医者が到着する前に、つくしは、司の部屋から運び出された。

「何処に連れてくんだよ!」

「牧野様は、女性です。タマさんが、着替えさせます」

司の前に立ちはだかる西田からは、怒りが立ち昇っている。

「西田!テメー、俺に指図すんのか!」

「牧野様の身体の安全は、雇用契約書にも明記されております。髪一本、爪一つ、あの方の意思と無関係に損なう事は許されません」

語気は自然と強くなり、西田の本気が垣間見える。

自分の命を懸けても、ここを通すつもりはないらしい。

「雇用契約書ってなんだよ」

「牧野様と楓社長の間で取り決められたものです。司様にも、そのルールは守っていただきます」

「はっ、俺には関係ねーよ」

「ならば・・・契約不履行という事で、牧野様がこちらに戻る事は二度とありません」

西田の口振りでは、そうなる事を望んでいるようにとれる。

司は、この年上の秘書を上から睨みつけた。

「勝手にしろ」

司は、興味を無くしたように西田に背を向け、ソファーに腰を下ろした。

だが、その心は、穏やかではない。

「道明寺・・・」

そう言いながら、自分の頬に触った時、微かな笑みを浮かべた顔が忘れられない。

流れ落ちる涙は、何処までも純粋で綺麗で。

ポトン

音を立てて、司の真っ黒に染め上げられた心に、一雫の波紋をもたらしていた。






気付けば、外は夕闇。

影が長くなり、司の部屋もオレンジ色に染め上げられていた。

グルグルと頭の中を回るつくしの顔。

しかし、答えは見つからず、司は、ただ外を眺めていた。

カチッ

ドアの開く音がして、司は、ハッと後ろを振り返る。

ドアの隙間に見えたのは、長年見慣れたタマの顔だった。

「夕飯をお持ちしました」

カタカタとカートを押し、司の前に置くと、なにもセッティングしないまま部屋を出て行こうとする。

「おい、タマ!最後までやっていけ!」

タマは、ゆっくり振り返ると、片手に持っていた杖を振り上げた。

ビシッ!

司の肩に硬い杖が食い込む。

ビシッ!

次は、足。

ビシッ!

次は、腕。

「いい加減にしろ!」

司は、杖を奪うと、遠くに投げ捨てた。

その目は、怒りに燃え上がり、たとえ小さな老女であろうと手加減なく殴る態勢は出来ていた。

「殴ればいい!」

タマの声が響く。

「なんなら、その、煮えたぎったスープをあたしの頭から掛ければよろしい!あの子にしたようにね!」

タマの体は、ブルブルと震えていた。

それは、恐怖ではなく、悲しみ。

「何故、坊っちゃまは、こんな風になられてしまわれたのか」

タマの嗚咽が、部屋に響いた。

司には、まるで、この屋敷全体が泣いているように思えた。




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司つく・Slow dance 2(未完)

こちらは、以前途中まで書いて辞めた作品です。

季節は、冬です。

暫く書く時間が取れないので、せめて今書いてある物を出したいと思います。

未完成ですので、気になる方は、読まずにスルーして下さい。

私には珍しいシリアスで、11話まで書いていました。

11話掲載時に、その後のあらすじを書かせていただく予定です。

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朦朧とする意識の中、つくしは、司の声が聞こえた気がした。





牧野





牧野





牧野





懐かしさに、涙が溢れた。

もう、流せないと思っていた温かな雫が、ハラハラと頬を流れ落ちていく。

「牧野さん、お目覚めになったかしら?」

声の主に思い当たり、つくしは、目を固く閉じた。

また、この女に、翻弄されるのか。

その思いが、胃の辺りをキリキリきしませ、悔しさで言葉さえ出ない。

「貴女と、契約を結びたいの」

楓の予想外の言葉に、つくしは、瞼を開け、無言のまま視線を向けた。

「こちらが、契約書よ」

「・・・」

「貴女のご両親には、承諾を得ているわ。もし、契約不成立なら、貴女の大切な人達がどうなるか、経験から分かっているはずよ」

氷のように冷たく、有無を言わせぬ響きに、つくしは、吐きそうになった。

蜘蛛の巣に囚われた虫。

血の一滴まで吸い取られ、用がなくなったら捨てるのだろう。

そんな思いを抱きながら、つくしは、目の前の契約書を見た。

『雇用契約書』

勤務時間は、朝六時から夕方の八時まで。

仕事内容は、司の身の回りの世話。

雇用期間は、司の記憶が戻るまで。

そんな日が来るのか?

一生、ここで飼い殺しにされるのか?

つくしは、絶望の中にいた。

他にも、様々な事柄が記された分厚い契約書。

しかし、他の事は、どうでも良かった。

はっきりしているのは、自分がもう二度とここから逃げられないという事。

「サインを」

手に、万年筆を握らされ、無理やりテーブルに向かわされる。

脳裏に浮かぶのは、優紀の笑顔。

公立高校に通うようになってからも、唯一自分とともに居てくれた人。

また、彼女の家族に手出しをされるのか?

それだけは、阻止しなければ。

つくしは、自分の名前を書類に書き込んだ。

メイドとして、司に仕える。

その歪な関係は、不幸の塊に思えた。

「では、今日から、お願いするわ」

平然と立ち去ろうとする楓に、つくしが、手に持つ万年筆を投げつけた。

それは、楓のグレーのスーツにシミを作り、床に転がった。

「ざまぁみろ」

つくしは、些細な意趣返ししか出来ない自分を心の中で笑った。












「司様、朝でございます」

司が、目をうっすらと開けると、そこには、昨日の女がメイド服を着て立っていた。

司は、その既視感に、眉をひそめる。

「なんで、テメーがここに居る?」

つくしは、質問には、一切答えるつもりはない。

ただ、淡々と、メイドとしての仕事をこなした。

「お食事は、そちらにご用意しております。食べ終わりましたら、廊下にカートを出しておいてください。引き取りに参ります」

機械音声のような、抑揚の無い話し方。

司は、その顔に、怒りでもいい、怯えでもいい、感情を見たかった。

テーブルセッティングされた朝食に近寄ると、ティーポットを手に取り、つくしの頭の上から注ぐ。

濛々と湯気を上げ、髪から滴り落ちる雫が、床を濡らす。

つくしは、耐えた。

叫び声を上げそうになる唇を噛み締める。

司は、不敵な笑みを浮かべていた。

ここまですれば、何かしら反応があると思っていた。

しかし、すべてを注ぎつくし、ティーポットが空になっても、つくしは、微動だにしない。

彼女の白い頬が、赤く染まり、軽度の火傷を負っていることを示しても、ただ、床を見つめている。

司は、カッと頭に血が上った。

ティーポットを壁に叩きつけると、つくしの腕を取りバスルームへと引きずる。

そして、シャワーヘッドを掴むと、冷水をぶっ掛けた。

「司様!」

陶器の割れる音に気づいた西田が、駆け込んできた。

そして、ずぶ濡れのつくしに絶句する。

「医者を呼べ!」

司の怒鳴り声よりも早く、彼は部屋を駆け出していた。

司は、自分が濡れるのも構わず、つくしを抱き上げた。

そして、自分のベッドへと連れて行く。

「離して!」

「うっせー、黙ってろ!」

声を荒げながらも、司の目に、つくしを心配している色が見える。

つくしは、その懐かしい眼差しに、思わず、司の頬に触った。

「道明寺・・・」

そのまま意識を飛ばし、つくしは、真っ暗な世界へと落ちていった。

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